6時半ごろの往訪である。
忘年会のピークが影響しているのか予約のお盆がばらばらに2つ置かれているだけの静かな立ち上がりである。マスターからはさほど切れるジョークもないまま、しばらくして週2回は来店するという常連のお客様と隣り合わせとなる。
ひょんなことからスキーの話になったのだが、その方は名古屋に居た若い頃「私をスキーに連れてって」が流行っていて、愛車のパジェロでよく志賀高原に行ったとなつかしそうに話す。何人の女性に「連れて行って」とおねだりされたのか、連れて行った結果どうなったのか詳しいことは聞かなかったが、うらやましい青春の記憶である。
この常連さんとはしょっちゅうお目に掛かるのに、以外と過去のプライベートのことは聞いたことが無かったが、やはり若い頃は積極的にいろいろなことをしていたのだ。最近は仕事に追われる中、スキーはご無沙汰でせいぜい競馬を楽しむ程度のようであるが、「私を競馬に連れてって」とせがまれる女性は何人いるのだろうか。「私を競馬に連れてって!」とヌッ!とでてくるのがマスターだけでは辛いだろう。
そうこうするうちに予約の方が来店し、予約無しの方もボチボチ来店していつの間にやら店内が賑やかになる。そして8時を過ぎた頃には税務に詳しいMさんが来店して一番入り口付近の席に陣取り、マスターと言い争いをしながら日本酒1本とかんぴょう巻きをいただいている。結局最後は”私をスキーに連れって”とは無縁の色気の無いいつもの寿司竜である。