寿司竜日記 2022年6月20日(月)晴れ マラソン

本日は社内会議後、開店と同時に往訪すると、地上で係の者が看板に点灯するなど準備中で忙しそうにしている。予約はしていないので「入れてもらえますか?」とおそるおそる聞くと「どうぞどうぞ」笑顔で迎えてくれたのでほっとして階段を降り、当然誰もいない中、ひきずりさんの来店を予測して、一番手前のひきずりさん用の席を空けてその隣に着座する。

いつもなら、スポーツ新聞を広げ呆けているマスターなのだが、今夜は床屋へ行ったばかりなのか、頭もすっきりしてまずまず引き締まった表情でカウンター内に立っている。「今日は満席ではないのですね」と聞くと「今日は予約は入ってないけど明日はW大学の駅伝でならしたH君が来るよ」とのこと。

”駅伝のH君”は久しぶりだ。5年ほど前にご家族連れでお見えになったときに同席したが、多分それ以来だろう。そのときは、”駅伝のH君”の長距離の素質はお母さん譲りということで、お父さんは肩身の狭い思いをしていたことを覚えているが、時の経つのは早いもので、社会人の駅伝でも活躍した”駅伝のH君”も昨年のマラソンを最期に引退したらしい。

「でも箱根駅伝で活躍して有名になっても、マラソンで日本記録を出せば別だけど、社会人の駅伝じゃあまり稼げませんもんね。かえって相撲の方が稼げますよね。」とマスターに言うと、

「そうね、昔”土俵には銭が埋まっている”と師匠が言ったら、本当に土俵を掘った力士がいたらしいけどね。」などとつまら無いことを言う。

そこにひきずりさんが到着し、一番乗りでないことを悔しがりながらも、いつもの自分の席に着座する。足の痛みの原因は痛風ではく原因不明ということだが、ともかく今夜も元気にとろ・いか・かんぴょうの注文である。

ひきずりさんは愛妻家である。「もし生まれ変わってもまた今の奥さんと一緒になりますか」と聞くと、「当然ですよと!」なんのためらいもなく答える。マスターはどうだろうかと同じ質問をすると、「当然ですよ。なあお前。」とこれまた何のためらいも見せずにのれんの奥の厨房に居る係の者に声を掛けると、即座に奥から「ええ!」と大きな声で返事がある。いつも「いつわりの夫婦」と謙遜してはいるが、なかなかどうして実はラブラブでお互い信じ合っているのである。

”駅伝のH君”はマラソンをもって競技人生を引退したが、二人で手を取り、慈しみあいながら人生のマラソンを走り続けるまぶしい存在がそこにあるのであった。

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