寿司竜日記 2022年12月19日(月)晴れ 人知れず流す涙

今夜は寿司竜にボクシングバンタム級の元世界チャンピオンが来るというので、何とか末席を確保してもらう。元チャンピオンは6時頃来店なのでその前5時半頃到着すると、お客様はカウンター中央に金融に超詳しい方のみで、カウンター脇にはぶり大根がずらりと並べられ、元チャンピオンが来るのを待っている。

心なしかマスターも緊張気味だが、それを振り払うかのように「ようしっ!やるぞぉ!!」と気合いを入れている。仕事で自分に活を入れるなど、初めて見た。

間もなく元チャンピオンを招待した方が先着すると、マスターはさっそく「チャンピオンが来られたら、写真撮らせていただいていいですか?」と交渉するなど抜け目が無いが、その方が、「・・・知り合いで”焼きめし亭チャーハン”ていう芸名で落語やってるのが居るんだけどさぁ・・・」などと言うと「結構な名前ですね。”ラーメン亭チャーシュー”なんてのは居ないんですか」などと、即座に切り返しているのをみると、大分緊張感が取れリラックスして、元チャンピオンを迎える心構えができたようである。

そこにいよいよ元チャンピオンの入場である。入場の曲こそかからないものの、いつものシロアリ入場の時には無い緊張感が漂うが、マスターが「お久しぶりですうぅぅぅ」ともみ手で挨拶して場を和ませている。どうやらこのチャンピオンが来店するのは今夜が2度目のようである。

いつもはマスターとの会話を楽しむ金融に超詳しい方も、敬意を表して元チャンピオンにマスターを譲っているが、久しぶりにシロアリ以外を相手にして、マスターも嬉しそうである。

そんなマスターを見るのも嬉しいことだが、ふと入口の方を見ると、引きずりさんが突っ立て居る。今夜は満席だと事前に伝えていたのに、嘘と思ったのか、はたまた一人ぐらい何とかなるとタカをくくってきたのか解らないが、満席というのは嘘では無く本当だったのだと理解して、すごすごと引き上げる。後ろ姿が痛々しい。

マスターの喜びの陰に、人知れず涙を見せる男の姿がそこにあるのであった。

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