曾祖父が明治時代の終わりころに秋田県の岩館から宗谷に漁師として入植したことから、なぜ・どのように宗谷地方に来たのかと調べていて、「近代民衆の記録7漁民編」の「秋田でかせぎ物語 漁民編(筆者:松村長太)」にたどりつき、多分ここに書かれているのと同じような経緯で宗谷に入植したのだろうと理解できたが、その同じ”民衆の記録”のなかに、明治維新の頃、香川県沖の本島(ほんじま)で発生した”小坂騒動”に関する記載があった。海の地主ともいうべき”人名(にんみょう)”に海の小作人ともいうべき一般漁民が一揆のような騒動を起こし、鎮圧され、多数の死傷者を出したという事件だが、そのような事件を知ったことから、漁民の暮らしの場所としての瀬戸内海に興味をもち、瀬戸内海の漁村と漁民を見て回る旅をすることにした。その旅について記録する。
瀬戸内海の島々を調べていて、商船三井のサンフラワー瀬戸内海カジュアルクルーズというのを見つけた。商船三井のフェリーは通常夜間に瀬戸内海を運行するのだが、年に数回昼に運航する便を用意していることがわかり、まずはサンフラワー号で瀬戸内海の島々を見ながら大阪から別府に向かい、そこから瀬戸内海を時計回りに回ることとした。
- 大阪発の航路。小豆島を抜けて西へ向かう。
- 大分港へ向かう。
●1日目(5月10日(土))
朝東京を出発し、大阪ではちょうど大阪万博へ向かう人たちと同じ電車になるなどしながら、昼前に大阪のフェリーターミナルに到着。12時15分、サンフラワー号に乗船し、大阪港を出発。
乗船すると、瀬戸内海の地図、クルーズに関する案内、瀬戸内海の島々の解説のほか、料亭なだ万のお弁当が配布されたので、さっそくレストランの海向きのカウンターに座り船内の自動販売機で買ったハイボールを飲みながらお弁当をいただく。なだ万のお弁当だけあり、美味しい。隣の席の女性と「旅はいいですね」などと話し込むが、こちらが礼文島の観光大使をしていることを話してアピールすると、その方も昔礼文島に行ったことがあるとのことで、「桃岩ユースですね!」などと盛り上がる。食事が済んで、「またご縁があればよろしく」と別れたが、狭い船内にもかかわらず、これっきりお目にかかれなかったのは残念。
軽く船内探索して瀬戸内海を眺めた後、大浴場へ。窓外の瀬戸内海を見ながら、クルーズ船内の大浴場とは本当に贅沢だ。
その後は、デッキで引き続き瀬戸内海の島々を目で楽しむ。ミニイベントとしてピアノ・チェロ・バイオリンによるミニコンサートや、”船旅アドバイザーによる瀬戸内講談”などが開催されているのでそれらも適宜楽しむが、コンサートは聞いたことのある曲を生演奏で聞くことができてよかった。
夕食は、2500円のビュッフェだ。2500円でお刺身なども含め、一通りのものは揃っているし、お酒も自動販売機でハイボールを買って持ち込んだのでコスパは良い。
寝室は一番安いカプセルのような部屋だが、特にうるさいこともなく、環境としては十分であった。
船は当日の夜12時過ぎに別府港に到着する。そこで降りてもよいし、翌朝8時まで船内にとどまってもよいが、今回は船内にとどまることにした。
- 海と島を眺めながらの夕食
●2日目(5月11日(日))
朝はクルーズ船内で750円のビュッフェ。最近なんでも高騰しているなかで、これもリーズナブルである。
8時に下船し、レンタカーで国東半島沖の姫島に向かう。
カーナビの示す道順に従い、国東半島を縦断する対向車もほどんどない寂しい山道を通ったが、民家もない山奥に小さな女の子を二人連れている若いお母さんの姿があった。農業か林業を営んでいるのかわからないが、こんな山奥で家庭をもつその家族愛に感動する。
10時過ぎに伊美港に到着。11時発の船まで時間が少しあるので、港の周辺を見て回る。11時の船に乗り、20分ほどで姫島に到着。船では阪急交通社の日帰りツアーの団体客と一緒だった。エビの養殖場と、漁港、旧庄屋跡などを見て回る。姫島は、幕末の下関戦争のとき、連合艦隊が集結した島らしいが、どこに終結したのかはわからなかった。姫島も日本の他の島と同じように過疎に悩まされているが、エビの養殖が経済を支えており、比較的新しい大きな家が多く、他の島よりは寂れた感が少ない。
13時姫島発の船で伊美港に戻り宇佐神宮に向かう。道鏡事件で有名な神社だが、さすがに立派である。お参りして今回の旅の無事を祈った後、今夜の宿泊地である徳山に向かい、19時ごろにホテル到着。
宿はホテルアルフレックス徳山駅前。
夕食は事前に調べていたラーメン屋(らーめんさかえ)予定だったが生憎お休みで、他のラーメン屋もみな空いておらず、やむなく吉野家に入る。東京の吉野家ではいつも牛丼だが、旅先でも同じではつまらないので親子丼にする。結果として夕食は安上がりに。稚内市のふるさと大使をしていて、稚内に行った人から食事をするところがなくて困ったと聞くが、それは稚内に限ったことではなく、徳山ぐらい大きな町でも、駅は立派なのに曜日によっては食事をするところがほとんど開いていないなど、旅行者にとっては厳しい面が多いのを実感する。
- 伊美港
- 伊美港から姫島を望む
- 連絡船
- 姫島
- エビの養殖場
- 宇佐神宮