4月というのに底冷えのする雨の中、6時前の往訪である。
こんな雨の中なのでどなたもいないのではないかと思っていたが、一番手前にしっかりとぐりんぐりんのMさんが陣取っている。1番乗りを目指して5時過ぎに来店し、すでに大きめのとっくりが2本目のようである。
さしたる話題もなく淡々と時間が経過する中、ふっと話題が途切れた瞬間にマスターがMさんに声を掛ける。
「そういえば、23日の土曜日に恒例のシロアリの宴会があるんだけど、Mさんも来ます?」
「私は土日は家をあけられないんですよ。解ってるでしょ!」
「ああっ、そうでしたね。解ってたんですけど、わざと言ってみたんですよ。ひっひっひっ!」
もともとMさんには来てほしくないのに、来られないのを解っていながら来てほしいかのように声を掛ける。限りなく嫌みな男である。
不憫なMさんが可哀想で心の中で涙していると、奥で電話が鳴り係の者が電話を取る。「あぁ~。大丈夫ですよ。お待ちしてますぅ。」と大きな声。この「あぁ~」の雰囲気で、だいたいシロアリかそうでないかが解るのであるが、この気安い感じはシロアリかなと思っていると、やはりHさんとのことであり、まもなく来店する。
さらに、「あぁ~」と電話がありWさん、その後にさらに「あぁ~」と続いて大王と、「あぁ~」の連発でいつものメンバーが集まる。底冷えの雨もものかは、限りなく嫌みな男がますます元気になる寿司竜である。