5時過ぎの到着。先週の菊花賞はダノンに期待も惨敗だった。かたやマスターはダノンには目もくれず、勝った馬から買うと先週言っていたので、満面の笑みで自慢するかと思ったらそうでもなく、なんとなく元気がない。どうしたのかと思っていると
「血糖値が高いんですよ。血圧も低くて何かだるいんですよね」とのことである。
「それは心配です。何しろこの店がなくなったらシロアリの行き場が無くなります。シロアリが他の店に行くようになるととんでもないことになるので、ともかく回復に努めて下さい。あんまり辛くなったら、この店たたんで、どこかに勤めて、週3~4日働くなんていうのもあるんじゃないですか?私の知ってる板前さんで仕込みだけ手伝ってるなんていうのもありますよ。」
「いまどきの寿司屋は分業なので、一気通貫で仕事ができない板前が多いんですよね。魚を三枚におろせないのも居るようですからね。魚もさばけないんじゃ、この寿司竜のとんでもないお客はさばけないね。」と体調は今一でも口はまずますである。
そこへ親子連れのお客様が来店。お父さんとお嬢さんである。
「さて、何にしましょうか?」とマスターが聞くと
「うちの娘は日本酒がすきなんで、お酒に合うつまみを!まだ学生なんですけどね。」
「得意な料理は何なの?」
「オムライス!」
「将来は何になるの?」
などと、マスターもシロアリを相手にするのと違って、未来のある若者との会話はきれいである。
それにしても、父親が若い自分の娘を連れてお寿司屋さんとは幸せなことだ。
”お寿司屋さんに娘を連れてきて常連さんの扱いをしてくれたら嬉しいだろうな””娘にお寿司を腹一杯食べさせてあげる親の幸せを感じているだろうな”などと横目で見ていて思う。
今日は体調が思わしくないマスターだが、マスターにも若いころ、自分の娘と二人でレストランに行った幸せがあっただろうか。どんな顔をして、どんな会話を娘やお店の人としたのだろう。
いつもと違って、家族のホンワカした雰囲気が漂う寿司竜である。