5時半ごろ到着。奥から手前ま予約のお盆が置かれており、きれいである。
「今夜は満席なんで、私と話をしないで済みますね。うれしいでしょうね。」とマスター。
「そんなことはないですよ。寂しいですね。」と一応は返す。
「でも、隣はミッキーさんなんですがいいですか。」
「ええ、うれしいですね。」と、これも心にもない返事をする。
「そういえば、名古屋へ転勤になったWさんはその後どうですか?何回かは東京に戻っているでしょうから、1回ぐらい来てもよさそうですが・・・。」と聞くと
「まだ来てませんね。東京の事務所も自宅も品川方面だから、わざわざそこを通り越して神田まで来る気にはならないでしょう」
Wさんの会社は名古屋では大手である。何といっても名古屋と言えばトヨタ様様でトヨタの社員にあらずんば人にあらずという感じだろうが、Wさんの会社はそれに次ぐ勢いがあり、ましてやクラシックも狙える馬主でもあるのだから、栄でもモテモテで新年会や歓迎会でなかなか夜が忙しいのだろう。たまには寿司竜に寄ってほしいものだが、まずは飲みすぎに注意という時期かもしれない。
そこへ、5人の予約のお客さんがまとめて到着。美人の二人を男性が取り囲む布陣で奥に着座する。女性は今話題のフジテレビの女子アナにも負けない美人であり、俄然マスターの鼻息が荒くなる。
「例によって例のごとくでいいですか!そうそう、玉子焼きも焼きますね。」などと、動きも軽やかだ。そして、「刺身のツマはそのまま取っておいてくださいね!」とツマにのりを巻いて出し、女性陣を感動させている。今夜は下手なダジャレではなく寿司の味とテクニックで勝負している。
「それにしても、ツマにのりを巻いて食べさせるのは、いつ誰が考え出したんですかね?」とマスターに聞くと、「これは自分のオリジナルですよ。やってみたら結構受けが良かったんでずっと続けています。でも、ツマにしてもワサビにしても、そしてガリも寿司屋で出しているものは、皆毒消しの効果があるんですよ。ツマは大根ですが、大根役者なんてのがありますよね。大根役者の大根てのは、”当たらない”という意味で、”当たらない役者”ということなんですね。知ってました?」
すぐさまネットで調べてみると確かにそのとおりである。今夜は美人が多いせいか、知性と教養があふれる話題をということなのだな。いつもどうしようもないダジャレに翻弄され、徒労感が残るばかりなのだが、珍しく少し利口になった気がする今夜の寿司竜である。