だんだん春らしい陽気となり、アジサイなどの新芽も吹きだしている中を、まだ明るい5時過ぎに到着。準備が遅れているのか店頭に「営業中」の木製プレートも掲げられておらず、照明もついていない暗い階段を下りて入店すると、すでに一番奥にお客様がいる。照明もついていない階段を下りて一番乗りをするとはただ者ではないと思っていると、久しぶりにお見えになった常連さんのようだ。現在アメリカの西海岸に赴任中で、久しぶりの帰国の合間を縫っての来店らしい。
「このお客さんは英語ペラペラなんですよ」とマスターに紹介されるが、英語ペラペラというと元イケメンのOさんを思い浮かべながら軽く挨拶をする。
「アメリカに赴任してどれぐらいになりますかね?もうそろそろ戻ってくる頃ですか?」とマスター。
「いやいや、まだまだですよ。前任の人なんか10年近くいましたからね。それに戻ってきたって若い連中ばかりなんで、もう自分の席はないですよ。」
「席がないのは行く前からですよね!」などと、久しぶりなお客様にも容赦なくパンチを放つマスター。それにしても久しぶりの常連さんにパンチを放つマスターの顔は嬉しそうである。
「でも、お客さんが海外に行っている間に寿司竜も国際化して、毎日のように外人さんが来るんですよ。外人さんはチップの習慣があるんで、最後にチップを置いていこうとするんですが、うちはチップはいりませんよとお断りすると、そばにいる日本人のお客さんが欲しい欲しいという目つきで見てますね。」
その”欲しい欲しいという目つき”のお客さんを想像していると、そこに元イケメンのOさんが来店。不思議なものである。”英語”と聞いて元イケメンのOさんを思い出したら、それに応えるように来店するとは。
元イケメンのOさんは、久しぶりに来店のお客様と知り合いらしく、これも久しぶりということで大いに話がはずんでいる。今ここに外人さんが来てくれたら、この寿司竜は英語での会話が弾み、国際化している寿司竜を目の当たりにできたのだったが、次にやってきたお客さんはミッキーさんである。
活舌の良い大きな声の日本語が充満しだした。これで、いつもの寿司竜であり続けることが確定し、今夜も落ち着いて飲める純日本風の雰囲気の寿司竜である。