一昨年の旧東海道の旅に続き、今回は旧中山道の旅である。江戸時代の道(旧道)が残る峠道を中心に、電車やバスを乗り継いで行った旅を記録する。
東京を出発して本格的に旧道が残る最初の道は群馬県の碓氷峠であるが、これは今回の旅に先立って、7月に踏破したので、今回はその続きである。
●7月に踏破した碓氷峠の様子
●1日目 10月19日(日)
初日はいきなり最大の難所と言われる旧中山道最高峰の地である和田峠を目指す。
6時34分上野発の新幹線で長野県上田駅へ行き、そこからジェイアールバス関東の路線バスに乗り南へ下り長和町へ。小一時間乗車の路線バスは最初から最後まで他の乗客は居らず私一人だった。終点の長久保のバス停からは、長和町のオンデマンドバスナガワゴンに乗り、旧中山道の登り口標高1000m程度の男女倉口(おめぐらぐち)に向かい、和田峠を目指して10時20分に歩き始める。最近各地で熊による人的被害が報道されているため、少し緊張感のある旅のスタートだ。天気は曇りで雨の心配をしながらひたすら歩く。誰にも出会わず誰にも追い抜かれない静かな山道に、自分の熊鈴だけが鳴り響く。ひんやりする気温だが、歩くにつれて汗が出てくる。道中、昔をしのばせる道祖神や馬頭観音などを拝みながら、3時間ほど歩いてようやく峠の頂点に達する。なかなか楽ではない登りの道だが、いつのときでもその頂点に達した時にはすがすがしさがある。晴天であれば素晴らしい景色を眺められるのかもしれないが、曇り空で遠くの景色が眺められなかったのは残念だ。
- 始発から終点まで私だけだった長和町行きの路線バス
- 長和町のオンデマンドバス ナガワゴン
- 和田峠入り口付近
- 和田峠
- 和田峠
- 和田峠の石畳
そして下諏訪宿を目指して下りにかかるが、結構急な下り坂である。江戸時代大きな荷物を持って下諏訪側から上ってくる人も牛馬も大変だったろうと思いながらひたすら下ってゆく。そしてようやく16時ごろ本日の宿宮乃湯に到着。たまたま今日は他に泊り客もないとのことで、ここでも静かに風呂に入り、豪勢な食事をいただく。和田峠は標高1600mあり、相当寒いのではないかと防寒具をたくさん持ってきていたが、登りでは汗をかいたので、温泉がまた気持ちが良い。地方に来た時の楽しみの一つに夜空の星を見ることがあるが、生憎雲が多く星は見えないし、明日の朝は5時出発なので、入浴・食事の後はすぐに布団に入って休むことにした。
- 宮乃湯旅館
- 豪勢な山の幸
●2日目 10月20日(月)
宿を5時に出発。雨上がりで路面は濡れており、まだ夜明け前で暗いが、30分ほどで諏訪大社下社春宮に到着。まだ参拝客も居ない中、お参りして次の諏訪大社下社秋宮に向かう。ちょうど6時ごろに到着すると、神殿の前で人々が整列している。何事かと思っていると、神主さんが出てきて、朝の神事があるようだ。神殿の前に並んでいる人は氏子ではないかと想像する。神主が供物をもって神殿に上がると、氏子と思われる方々が深々とお辞儀をする。神主が祝詞をあげ終わると、また氏子と思われる方々が深々とお辞儀をする。毎日やっていることかどうかはわからないが、もしかしたら数百年かそれ以上連綿と続いている神事なのかもしれない。写真をとるのがはばかられたが、興味深い光景であった(後日ChatGPTに聞いてみるとやはり”朝御饌祭”という神事であった)。
- 諏訪大社
- 諏訪大社の御柱
神事を見た後改めてお参りして家内安全・無病息災そして旅の安全を祈った後、大社をあとにして、近くのコンビニへ。焼きそば、おにぎり、パンを買って焼きそばはその場でいただき、一息入れて下諏訪駅へ向かう。駅に着くとちょうど通勤通学時間帯だが、学校に通う子供を送ってくる親の車が数珠つなぎになっているのは、地方の風景といえるのだろう。
下諏訪駅7時58分発の列車に乗り、奈良井駅下車、昔の面影をよく残す奈良井宿をすぎ、鳥居峠へ。鳥居峠も峠道だけに、道々に熊を寄せ付けないための鈴鐘があるほどの峠道だが、ここは和田峠と違い外人だらけである。ハイキング気分で熊鈴もつけずに上ってくる外人さんと随分すれ違ったが、日本人は10人に一人も居ない中、2時間半ほどで無事鳥居峠も踏破し、藪原駅で列車に乗り宮ノ越駅へ。ここは木曽義仲に縁のある地で、木曽義仲関連の資料を展示する”義仲館”と義仲が平家打倒の旗挙をしたという”旗挙神社”に寄る。今から800年以上前の歴史をうかがい知ることができる場所だが、木曽義仲の時代から生きているという大欅を見た後駅に戻り列車で木曽福島へ。
木曽福島では箱根と並ぶ重要な関所であった福島の関所跡と枯山水で有名な興禅寺を見学し、本日の宿さらしなやへは17時ごろ到着。素泊まりなので、お風呂をいただいた後は地元の町中華へ。木曽福島ならそばをいただこうかと思っていたところ、生憎夜営業している蕎麦屋がなかったのだが、かえって田舎の絶品チャーハンを味わうことができてよかった。あわせて餃子とハイボールで旅の疲れを癒す。
- 奈良井宿
- 鳥居峠
- 旗挙八幡
- 町中華の絶品チャーハン
- 木曽福島駅前


















