寿司竜日記 2025年8月20日(火)晴れ お盆明け

お盆休みを挟んで2週間ぶりの往訪である。

赤兎馬の一升瓶が奥に置いてあるのみの静かな店内だが、壁に「22日金曜日ランチ休みます」と紙が貼ってある。親が亡くなるのでもない限り休まない寿司竜なので何事かと聞くと

「足が痛いんですよ。血が出てとまらないんです。お盆中に一回病院でみてもらったんですけど、大きな病院できちんと検査してもらうことにしたんです。」

とのことである。マスターも健康年齢はとうに過ぎており、いつ何があっても不思議はない年頃なので

「それは大変ですね。奥さんも心配で、お盆中もゆっくりくつろげなかったんじゃないですか?」

「全然心配なんかしてないですよ。女房は毎日酒食らってましたね。」とのことであるが、仲よい”偽りの夫婦”のことである、心配で心配で酒を飲まずにはいられなかったのに違いない。

それにしても、職人は体が資本だから厨房に立てないようでは一巻の終わりだ。係りの者でなくとも心配で心配で仕方がないが、ここ寿司竜は足腰よりもまず口先である。その口先は元気なようなので、何とか来週まではもつだろう。

さて今日はお盆明けである。

「お盆休みはお嬢さんは帰省されたんですか?」

「戻ってなんか来ませんよ。何やってるんですかね。でもまあ、便りがないのはよいたよりっていいますから、それでよしとしますかね。」

「便りと言えば、マスターが若い頃は実家に手紙を書きましたか?」

「手紙なんか書きませんよ。電話かけることもありましたし、電車ですぐなんで、家に帰って話してましたね。」などというと、奥から係りの者が

「帰省するときは洗濯物持って帰ってましたからね。」などと当時の様子を語る。

なるほど、当時は自分で洗濯機を持っているわけもなく、コインランドリーなどというものもないから、洗濯は結構大変だったはずだが、実家に帰省するたびに洗濯物を持って帰っていたとは。図体のでかい若者が大きな荷物を抱えて東北本線の電車に乗る姿が想像される。

「それにしても、いつまでも洗濯させられるなんで、母親も大変でしたね。」と言うと

「いやなに、親孝行しているんですよ。まだまだ頼りにしてますよっていうことでね。」とうそぶいている。

そんな半世紀も昔のことを忍ぶ、お盆明けの寿司竜である。