今夜は他のお客様が居ない。静かだ・・・。
マスターとじっくり話ができる。決してうれしくはないが。
マスターの相変わらず崇高な駄洒落を聞いているうちに、ひょんなことから野坂昭如の話になった。マスターは、野坂昭如の「火垂るの墓」が好きだとのことである。
私は、火垂るの墓のような、ハッピーエンドでない話は、好きではない。悲しくて見ていられないのだ。
私は野坂昭如といえば、「黒の舟歌」である。
♪男と女の間には 深くて暗い河がある♫ 誰も渡れぬ河なれどエンヤコラ今夜も船を出す♫
♪Row&Row Row&Row♫ 振り返るなRow-Row♪
随分昔にはやった歌だ。当時はこの意味がわからなかったが、今では解るような気がする。男と女は難しいものである。お客様とマスターとの関係よりもはるかに・・・・。