本日はサラリーマン生活最後の出勤日である。身辺整理や関係者へのご挨拶を済ませ、しろありには似合わない盛大な見送りを受けて会社を出たが、やはり感無量である。晴れ晴れとした面もあるが、一抹の寂しさもあるこの夜をどう過ごすか・・・やはりここは何も考えなくて済む寿司竜にかぎるということで、記念品と花束で両手がふさがり雨が降る中で空席確認の電話をする。いつものとおり係りの者が出るが、一番入口よりの最後の1席のみあるという、この日の私のために用意されたような席に向かう。
いつもは、マスターが寄って来てくだらない話をうるさいぐらいに聞かされて辟易するのだが、今夜は満席のため、得意の玉子焼きを3度焼くなど忙しいマスターに邪魔されずに済みほっとするその席で、ナマコ酢、アジのたたきと定番のおつまみをいただく。静かに感慨に浸るが、サラリーマン生活に終わりがあれば始めがあるように、寿司職人の道にも終わりがあれば始めがあるということで、マスターに寿司職人としての始めを聞いてみると、中学を卒業し集団就職で40分ほどかけて浦和にきて寿司店に弟子入りしたとのことである。
そのお店もよくこのマスター(当時は小僧といったのか?)を受け入れたものであるが、案の定このマスターが入店したおかげてその寿司屋はつぶれ(やはりしろあり会会長にふさわしい活躍である)、その後は、渋谷のお店等で修業をして(このお店は食いつぶされていないのか?)、今の神田寿司竜開店となったようである。
いろんな人に苦労をさせたんだなぁ。マスターの顔の皺のひとつひとつに、その年輪にふさわしい何とも言えないすご味を感じる。おそろしい。
その凄みを笑顔で隠してお客様の笑い取るのを横目で見ながら、しんみりと感慨に浸る今夜の寿司竜であった。