寿司竜日記 2021年1月13日(水)晴れ

緊急事態宣言によりお酒の提供は7時までのため早めに往訪ということで開店まもなくの到着である。まだどなたもお見えになっていないお店の中をすすむと、マスターがカウンター内で下を向いていろいろ準備中である。お店の中程まで進んでしばらくその動きを間近で見ていても気づかず何かやっている。

じっと見ていてもまだ気づかないのでとうとう声をかける。

「今晩は!いやあ、ずいぶん前からここに佇んでんで見ているんですが、気づかないほど集中して仕事してますねぇ!!」

「そうなんですよ!集中してないのはお客さんがいるときだけですね!!」

と今夜も快調な滑り出しである。

着座するまでずいぶん時間がかかったが、今夜はいよいよ今週中に迫った行商の開業の話である。個人事業の苦労をマスターに訪ねると、「事業をやれば苦労はあるもんだけと、この商売の素晴らしさは”いい常連さん”に恵まれているときに感じるね。私なんかすごく”いい常連さん”に恵まれていると思うけど、Nさんもいい常連さんに恵まれるといいですね。」とまじめな回答である。

行商をする場合、なるべく人通りの多い繁華街を流して一見さん相手に商売するか、人はそれほど多くはないが、じっくり地元に根を下ろして常連さんを開拓するか、いろいろ考えさせられる言葉である。

いずれにしても、シロアリ軍団というこの寿司竜のすばらしい常連さんの群れも、一朝一夕にできたわけではない。このシロアリたちは、マスターと係の者の長年にわたる血と汗と涙の結晶なのである。

一朝一夕で成功するはずのないその個人事業の道に踏み出す者にとって、その先輩個人事業主が目の前でキラキラ輝いて見える今日のマスターであった。

シェアする

フォローする

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。