今夜も丁度5時に一番乗り。
席に着くなり「玉子焼きましょうか?」と元気にニタッと笑うマスター。前回は仕込みに疲れ切って玉子を焼く気力も体力もなかったが、大分回復したようだ。そんなマスターからの最初の話題は詐欺のことである。
何でも寿司竜のお客さんが振り込め詐欺にあったらしい。大変気の毒で胸が痛む話だが、「とても詐欺に遭うような方じゃ無いんだけどなぁ。詐欺を働くなら解るけど。」と、被害に遭ったお客さんを気の毒がるでもなく、「持ってる人はひっかかるんだよね。私のように、パソコンはない、スマホどころか携帯も無いような人はひっかかりようがないもんね。」とむしろ嬉しそうである。常連さんに良いことがあったら共に喜び、悲しいことがあったら共に涙する、それが人の道であろうが、このそこに板前は全くその素振りも見せず、むしろ人の不幸をエネルギーにしているかのようだ。今夜は立ち上がりから元気に鼻歌を歌いながら玉子焼きを焼いているのはそのせいなのかもしれない。
そのお客さんが気の毒で気の毒でお酒ものどを通らない思いをしているところへ、超ボクさんが美しい大人の女性を連れて到着。超ボクさんがお連れになるのは元ボクサーか美女であるが今夜は美女の日である。嬉しい。たまたま超ボクさんが、トイレに行かれた隙にその美人と会話である。
「最近超ボクさんをユーチューブで見つけました。いまは元チャンピオンというよりユーチューバーですね。チャンネル登録や高評価ボタンを押さなくちゃですね。」
「そうなんですよ、是非お願いしますね。」
などと会話が弾む。冒頭の詐欺の話で少し雰囲気が悪かったが、ガラッと雰囲気が明るくなるのは、やはり美女のお陰である。
そこへお店の雰囲気を明るくすると言えばこの方と言われる檸檬さんが到着。檸檬さんがこの店に来るようになってからちょうど一年とのことだが、シロアリの一員といってもよい雰囲気がすこしづつ醸し出されてきている。この調子で、精進してもらいたい。
もちろん、超ボクさんも、檸檬さんも、あるお客さんが詐欺にあったなどとは知らない。美味しいお寿司をいただいて、舌鼓を打っている。
人の不幸に関係なく楽しそうな時が過ぎてゆくいつもの寿司竜。詐欺に遭ったお客さんは気の毒だが、何とか気を取り直し、笑顔で寿司竜に戻ってきて欲しいものである。