雨の中、5時過ぎに到着。今夜はカウンター奥にいつもの焼酎の一升瓶が一本あるだけの静かな予感のする店内であるが、冒頭の話題はやはり先日ノックアウト防衛した井上尚弥である。初回いきなりネリの左フックでダウンを喫し、どうなることかと心配したが、その後は隙を見せず圧倒し、最後は強烈なノックアウト勝利。本当に井上は強い。
最近は競馬の話題が中心の寿司竜だが、本来はボクシング好きが集まるお店で、ボクシングのことを語らせるとうるさいお客さんが多いのだ。大王などはその典型で、以前「最も面白いと思うスポーツは何ですか?やっぱりボクシングですか?」と聞いたところ、「ボクシングはスポーツじゃないんですよ、ボクシングは芸術なんです。面白いなんて表現で表せるものではないですよ。」などと口角泡を飛ばしていた。「なるほど芸術か。」と思ったものだが、確かに井上尚弥は芸術の域に達しているかもしれない。流石大王のことばには重みがある。
しかし、ボクシングが大好きなマスターもこの試合は見ていないという。最近、世界戦でも地上波TVで放映しなくなったので、ネットを使えないマスターは直接映像で試合をみることができなくなったのだ。「ここ随分ボクシングを見ていないんで、なんかボクシング熱が冷めてきちゃいますよ。話は変わるけど、中条きよしがつかまりましたね。知人に60%の利息でお金を貸してたらしいですよ。」などと急にお茶の間のワイドショーネタに移行する。
「そんな高利でお金借りる人いるんですかね。でも彼は、五木ひろしや八代亜紀と同じく全日本歌謡選手権出身なんで好きでしたね。それに当時は私も子供だったんで意味がよくわかりませんでしたが、デビュー曲”うそ”の詩もいいですよね。”折れたたばこの吸い殻で、あなたの嘘がわかるのよ”なんていうのは、大人じゃなきゃわかりませんよね。」
と言ってみて改めて思うのだが、本当にこの”うそ”という詩はなかなか素晴らしい。やはり、プロの作詞家でなければ書けない詩ではなかろうか。
帰宅後見たTVのニュースでは、中条きよしは知人にお金を貸したことは認めたが、高利をとっていることは否定していた。本当のことを言っているのかどうかは、たばこを吸わせてみるとわかるのかもしれない。