寿司竜日記 2021年7月15日(木)晴れ

持ち帰りのため開店早々の往訪であるが、マスターが電話中とのことでなかなか厨房の奥から出てこない。時間が掛かる面倒な電話のようで係の者が気を遣って”Tスポーツ新聞”を出してくれる。毎日欠かさず現金で購入するその新聞を、マスターはおそらく馬柱はもとより通常の記事から広告欄まで、隅から隅まで一文字も逃さず目を通すのであろう。インターネットも見ず、携帯電話も持たないマスターの愛読書にして、唯一無二の友といってもよい。以前Tスポーツ新聞は日付しか頼りにならないという方もいたが、それでもこの新聞は確かに人のお役に立っているといえる。

そんなことを思っているとようやくその電話が終わり、のれんをぐっと押し分けて、マスターがカウンター内に戻ってくる。

「いやあ、随分長い電話ですねぇ」

「そうなんですよ。役人からの電話でねぇ。本当に困ったもんですよぉ」

「しかし、相変わらずこのTスポーツ新聞は素晴らしいですね。最近日刊現代や夕刊フジは見かけないけど、このTスポーツ新聞は健在ですもんね」

「そうですよぉ。あの、Hさんも卑猥さんもTスポーツ新聞ですからね。ここではTスポーツ新聞無しには生きられませんよ。昨日Tスポーツ新聞の方がお客さんで来られたんですが、私も鼻高々ですよぉぉぉ!!」

これはすごいことである。ここ寿司竜におけるTスポーツ新聞の購読率は50%を超えていそうだ。少なくとも日経新聞や読売新聞よりは上であろう。そもそも紙の新聞がどんどん縮小する中で新聞社の生き残りは大変であろうが、Tスポーツ新聞の方々も、ここに居るときだけはそんなことは忘れ、安泰だった昭和の時代の雰囲気に浸れることだろう。

Tスポーツ新聞の方々!この安住の地寿司竜にもっとお越し下さい。

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