寿司竜日記 2023年3月1日(水)晴れ 栄枯盛衰

いよいよ暦の上では春、その通り暖かい日の5時過ぎに一番乗りである。

まだ店頭の「営業中」の木札も出されておらず、電気もついていない階段を降りていくと、係の者がお店の奥で予約席のセッティングをしており、マスターはカウンター内で脇目も振らずに仕込み中で、二人とも来店に気づかない。普段見られないマスターの脇目も振らない仕事ぶりをうっとりと眺めていると、予約席のセッティングが終わった係の者がようやく気づき、「ああっ!いらっしゃいませぇ」と声を掛けてくれ、予約のお盆が一杯の中、一番手前に着座する。

(マスター)「先週はHさんは駄目だったようですよ」「梅が至る所で満開で、鶯も寄ってきていいですね。私はウグイス嬢の方がいいけど」「でも花粉の時期になってきましたね。結構きついですね。お客さんもみんな花粉症では苦労してますよ。ただ、Hさんは花粉症関係ないみたいですね」「そういえば、そのHさんは、週末にK国に行くらしいですよ。コロナになってから初めてですね」と、Hさんの動向が話題となる。

するとそのHさんが来店。

(Hさん)「ドバイカップでパンサラッサが勝って賞金13億円もらったりすると、来年以降フェブラリーステークスにでる馬がなくなっちゃうね。パンサラッサも歴代賞金王のアーモンドアイをもうすぐ超しちゃいますよ」「K国は2泊3日の弾丸ツアーですが、初めて行くメンバーも入っているので、観光メジャーの場所もまた行くんですよ」などと元気いっぱいである。

さらに卑猥さんが到着し、Hさんの肩をポンとたたいて、小さく何か耳打ちする。

何事かとHさんに確認すると、パチンコメーカの老舗である西陣が廃業とのことである。これは驚きではないが感慨深いことである。

数年前にパチンコを止めた私であるが、80年代は随分パチンコをやったもので、そのときはまだデジタルの一発ものは無く、入賞すると11~15発の玉が出る台が中心の時代だった。台の左上部の釘を見て台を選んだものだが、そのころは西陣の台が多かった。

それが、デジタルの一発ものの時代になる中で、西陣の台はあまり見なくなっていたので、気にはなっていたのだが、案の状廃業となったかという印象である。

弱肉強食の世の中で、負けるものがでるのは必然とは言え、青春の一時代を共に過ごしたメーカーが消えるというのは寂しいものだ。

そんなふうに思いつつふと見ると、いつの間にかHさんの隣にしっかりとミッキーさんが陣取り、他の席もお客様で一杯となり、さらには、私と入れ違いでWさんが来店するという。そして、お店の外では引きずりさんが入店できずにしょんぼりとしている。

弱肉強食の世の中で、負けそうで負けないしぶとい寿司竜である。

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