ワシル・ロマチェンコとホルヘ・リナレスの一戦を観た。近年まれに見る好ファイトだった。お互いスピードがあり、クリンチもなく、すべてをぶつけ合っている。最後はボディーブローが効いて、ロマチェンコのKO勝ちとなったが、リナレスも負けてなお強しの印象である。
この感動をマスターと共有しようと、録画したDVDを持参しての往訪である。
しかし、以外と混んでいる。総勢8名のお客様がちょうど注文のピークを迎えており、ボクシングの話どころではない。マスターは、珍しくまじめに、けなげに、一生懸命働いている。
そう、マスターにとっては、板場はリングの上なのだ。モハメッドアリのごとく、蝶のように舞い、蜂のように刺す、そしていつもお客様を料理の腕ではなく、くだらないジョークで見事にノックアウトするのである。ただ、今日の対戦相手は、そのようにもてあそぶ常連さんではなく、まだランキングに入らない常連手前の方々なので、静かに、まじめに、板場の基本を見せている。まだまだマスターのジョークパンチを受け止める体力・技術が無いのは、マスターが一番よく知っているのである。
今夜は、ボクシングの好試合の感動を共有する間はなかったが、それ以上にまぶしいプロの仕事を観た一日であった。