今夜は大学時代の友人と6時に待ち合わせだ。15分ぐらい早く到着すると、一番手前の席には、一番乗りが好きなMさんが陣取って菊正宗のとっくりを静かに傾けている。
今夜の最初の話題は先日の「村田vsゴロフキン」戦である。
「マスター!見ましたか?いい試合でしたね。特に、1ラウンド終了時に村田が微笑んだように見えたのが印象的でした。プロのボクシング界に入ったときからのあこがれのチャンピオンと、こうして最高の舞台で拳を交えることに喜びを感じていたんでしょうね。男冥利に尽きることです。」
「地上波がやってなかったんで見てないんですけど、それはシロアリが寿司竜に入ってくるときの笑みと同じですね。最高のお寿司をいただけるということに喜びを感じ、思わず笑みが出る。男冥利につきることです。」
「確かにそうですね。ここのお寿司をいただけるなんて、本当に男冥利に尽きることです。」と頷く。
「でも、ちょっと確認ですが、今日ロシアが日本海にミサイルを撃ち込んだんですか?さっきMさんが言ってたんですけど。」とマスター。
「さっき、テレビのニュースでそんなこと言ってましたから、本当じゃないですか」
「そうなんですね。Mさんのいうことは当てになんないんで・・・。ついフェイクかと思いました。」
「それは無理もないですね。Mさんは存在そのものがフェイクですもんね。」と頷くと、隣のMさんは悔しそうにぐい飲みを仰ぎ呑む。
そうこうしていると、村田と同じように微笑み満点でHさんが到着である。どうしたのかと思っていると、先週の桜花賞でいろいろなパターンの馬券がすべて当たりまくったとのことで、この微笑みも無理はない。もう何年も見ていない微笑みだ。まさかこれはフェイクではないかと心配になるが、Mさんと違ってHさんは嘘はつけないタイプなので、きっと本当のことであろう。
これは春から縁起が良い。段々と運気が上向いてきそうな寿司竜である。